本年度は、レーザー装置の開発とさらにレーザー装置の完成度の確認及び中性子発生の新方法である(γ、n)反応による中性子発生を検証する目的にレーザープラズマ相互作用による高速電子線発生の実験研究をおこなった。まず前者では特に高ピーク出力レーザーにおいてレーザークラスター相互作用で技術的にネックとなるプリパルスの抑制とレーザー本体の信頼性に重点を置いた10TWレーザーの開発を進め、さらにプリパルス発生を原理的に抑制する試みとして光パラメトリックチャープドパルス増幅(OPCPA)法による光パルス増幅実験を行った。この結果、プリパルス10^<-6>の10TWレーザーを開発し、さらにOPCPA実験ではプレパルスが効果的に抑制されていることを実験的に明らかにした。その一方レーザー照射実験では、仏・独等で報告されている結果に近い約3×10^<19>cm<-3>の平均電子密度で0.62MeVの有効温度を持った0.2nC/shotの指向性のある電子線の発生を観測した。しかし発生した電子線を使いSiO2 5mmをコンバーターに(γ、n)反応による中性子の発生を試みたが、明らかな中性子の検出は認められなかった。この原因として(γ、n)反応を効率よく発生させるには10meV以上のγ線のエネルギーが必要なのに対して、発生した電子線の有効電子温度が低い事が考えられる。今回の研究ではパルスガスジェットの性能の限界によって高密度プラズマが生成できなかったために実験が出来なかったが、独仏の結果によると更に高い10^<20>cm^<-3>の密度領域では、有効温度が5〜8MeVに至る事が明らかになっている。次年度(平成15年度)では本研究のメインであるレーザークラスター相互作用による中性子発生について進めると同時に、パルスガスジェットの改良(つまり高密度プラズマが生成可能なガスジェットの開発)を中心に研究を展開する予定である。
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