本年度は、平成14年度に作製した外部共振器型半導体レーザー(ECDL)を用いて高密度水素プラズマ中の水素原子n=2状態の計測を行った。ECDLの線幅は水素原子のドップラー広がりよりも十分狭いため、ECDLの波長をH_α線を中心に掃引しながら吸収スペクトルを計測した。この吸収スペクトルから、n=2状態水素原子の温度および密度を求めた。プラズマ生成にはヘリコン波放電を用い、放電条件を最適化することにより10^<13>cm^<-3>の電子密度を得ることが出来た。小型装置での高密度水素プラズマ生成は非常に困難であるが、今回我々が達成した電子密度は世界でも最高水準であり、本プラズマ源はダイバータシミュレータとして使用可能である。代表的な放電条件は、RF電力2.5kW、磁束密度350G、水素ガス圧100mTorr以下、放電時間4ms、繰り返し周波数10Hzである。RF電力を1kWから3kWに増加させることにより、原子温度は0.05eVから0.17eVに増加した。このとき、n=2状態の水素原子密度は、5×10^9cm^<-3>から3.8×10^<10>cm^<-3>へと増加するとともに、RF電力2kWから2.5kWの間に密度ジャンプが観測された。この密度ジャンプは電子密度の密度ジャンプが見られる電力とは異なっており、その形成機構はまだ分かっていない。一方ガス圧に対する水素原子温度の依存性は小さく、ほぼ一定の値となった。このとき、水素原子密度は、ガス圧の増加に伴い減少した。また、いずれの条件で観測された吸収スペクトルにも高エネルギー部にわずかではあるが、ガウス分布よりも大きな吸収が観測された。これらの高エネルギー原子は、数は少ないが、水素原子全体の運動エネルギーの20%以上を占めており、エネルギーバランスを考える場合に重要な役割を担っていることが分かった。
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