本年度は、主に超音速クラスタービーム源の開発を中心に研究を行った。特に、コニカル型ノズルを製作し、生成されるファンデルワールクラスタービーム源におけるガスの時間的・空間的な振る舞いを高速イオンゲージを用いて測定した。その結果、クラスタリングが生じないヘリウムガス噴射では、空間密度分布がほぼ平坦であるのに対し、クラスターを生成しやすいアルゴンでは、ビーム軸上にピークを持つガウス分布に似た空間分布が得られた。これは、クラスターはより中心部に存在するという過去の実験例と一致している。さらに、ヘリウム・アルゴン混合ガスの場合、より断熱自由膨張が促進されるため、より狭い空間分布となることが明らかとなった。つまり、ヘリウムとの混合ガス噴射ではクラスター密度、あるいは、サイズが上昇していることを示している。 また、このノズルを用いてクラスター・超短パルスレーザーとの相互作用により生成される多価イオンを特定するための基礎実験を行った。具体的には、超音速コニカルノズルを用いて高圧窒素ガスを噴射させ、超短パルスレーザー(パルス幅60fs、強度〜10^<16>W/cm^2)を照射したときに生成される多価イオンからの発光を斜入射分光器にて観測した。得られた多価イオンのスペクトルから、水素様イオンまでイオン化が進行していることが判明した。さらに、多価イオン生成効率に及ぼすヘリウム分圧依存性(クラスタリング効率依存性)を調べることにより、最適なガス噴射条件を模索した。その結果、ヘリウムガス分圧が高いほど多価イオン生成効率が上昇することが明らかとなった。 以上の結果をまとめると、レーザー発振に必要とされる多価イオンまで電離が進行していることから、クラスタービーム源は本実験を行うのに十分な性能を有していることが明らかとなった。平成15年度は本格的な非平衡クラスタープラズマ中での反転分布生成に取り組む。
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