研究概要 |
近年,核融合装置のダイバータ近傍で発見されているカーボンダストは,トリチウムを吸蔵し炉内に残留するため問題視されているものの,その発生起源は不明である.本研究では,水素プラズマ壁相互作用によるカーボンダスト発生のモデル実験を行い,この発生起源を検討することを目的としている. 本年度は,周辺プラズマを模擬するECR放電装置を開発した.ダイバータ板を模擬するカーボンファイバーコンポジット(CFC)を設置したRF電極を容器の一端に配置し,壁面温度と入射イオンエネルギーを制御可能にしている.容器底部で捕集したダストの透過型電子顕微鏡写真から,1)数nm程度の球形ダスト,及び2)数百nm以上のダストが観測された.ダスト形状から,1)は気相成長したもの,2)は1)のダストが合体成長したものである可能が高い.シース電圧Vs<200VではVsの増加とともに,C,C_2,CH等のカーボン系原子・分子の発光強度,及び,CFC壁からのカーボン系粒子放出量は減少した.これは,入射イオンのエネルギーが増加すると,炭化水素分子がCFCのより深い領域で形成され,結果として表面から放出されにくくなるためであると考えられる.さらに,CFCターゲットへの顕著な水素吸蔵を観測した.気相に存在するC,C_2,CH等が,1)のダストの発生・成長に寄与していると推測される. 現在,生成しているプラズマのパラメータは,イオン密度は10^<17>m^<-3>,電子温度は5eV,水素原子密度は10^<18>m^<-3>程度である.次年度以降,プラズマ密度を1-2桁高めた実際の周辺プラズマに近い条件で,ダストのその場計測に用いるレーザ散乱法と水素原子密度測定に用いる真空紫外吸収分光法により,シース電圧,カーボン壁表面状態とカーボンダストの発生との関係について検討する予定である.
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