高温プラズマにおける乱流輸送機構の解明と予測は、磁場閉じ込め核融合研究において長年にわたる中心的研究課題の一つである。本研究では、その問題の解決に向けて、粒子運動論より規定される一体速度分布関数の発展を陽に求める直接数値シミュレーションを行っている。平成15年度前半は、14年度の結果を発展させ、2次元スラブ配位における弱衝突性イオン温度勾配(ITG)駆動乱流における速度分布関数スペクトルの数値的および理論的解析を行った。これにより、乱流輸送と関連したエントロピー変動の生成、そのスペクトル空間における伝達と衝突による散逸過程を統一的に理解することができた。そこで得られた結果を学術雑誌に発表した。これと平行して平成15年度前半より、トカマク配位を対象としたトロイダルITG乱流のジャイロ運動論シミュレーション・コードの開発を進めた。3次元の配位空間について磁力線に沿った小領域を取り扱うことで、曲率の悪い領域に局在した波長の短いドリフト波成分を高精度で計算することができる。さらに、2次元の速度空間を計算格子で分割し、計5次元の相空間における分布関数についての偏微分方程式(ジャイロ運動論方程式)を数値的に解く。これまでにコードのベンチマーク・テストとして、綿形固有関数・周波数、密度揺動の無衝突減衰過程、帯状流とGeodesic Acoustic Mode (GAM)のダイナミクス、等について詳細な検討を行った。特に、帯状流とGAMの減衰過程において、捕捉粒子による新古典分極効果を同定したこと、それと同時に、非捕捉粒子の位相混合効果により分布関数の微細構造が発達し、エントロピーが増大すること、等が新しく示された。これらの結果の一部を学会や国際会議などで発表した。また、無衝突運動論方程式の数値シミュレーション手法についても国際会議等で発表し、学術雑誌に論文を投稿中である。
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