1.摂動論的非線形シミュレーションコードを用いて、TFTR(米国)における中性ビーム入射実験において観測されたトロイダル・アルヴェン固有モード(TAE)バーストとそれに伴った高速イオン損失に関する計算機シミュレーションを実行した。物理的条件は実験に即した現実的なものとした。高速イオンは110keVに相当する、ほぼアルヴェン速度に等しい一定の速度で入射され、加熱パワーは10MWである。TAEによってプラズマ外部のリミタまで輸送された高速イオンは取り除かれる。磁気面は同心円状として、トロイダルモード数が1-3の5つのTAEを考慮した。それぞれのTAEの減衰率は常に一定で、4x10^3[s^<-1>]とした。磁場強度は磁気軸上で1T、アスペクト比は3.2である。安全係数は小半径の二乗に比例して変化するものとし、中心で1.2、周縁で3.0とした。背景プラズマとの衝突による高速イオン減速時間は100msとした。 2.シミュレーションの結果、5つのTAEが同期したバーストが一定の時間間隔2.9msで発生した。これは実験値の2.2msにかなり近い値である。TAEによって高速イオンが損失するため、高速イオン蓄積エネルギーはTAEが存在しない場合の古典的減速分布の40%で飽和した。各バーストに伴って高速イオン蓄積エネルギーが毎回10%減少した。これも実験における推定値である7%とよく一致している。ポアンカレ・マップによる位相空間解析の結果、二つの物理機構によって高速イオン損失が発生することが明らかになった。二つの機構とは、(1)複数モードの共鳴の重なり、(2)単独モードの非線形共鳴の重なり、である。また、TFTRにおいてはプラズマが強磁場側でリミタに接していたため、軌道が強磁場側に偏る逆方向入射ビームの損失が大きく、プラズマ中に蓄積されるのは主として順方向入射ビームであることを明らかにした。
|