研究概要 |
平成15年度は、大学共通材料である高純度低放射化V-4Cr-4Ti合金NIFS-HEATの溶接継手を作製し、溶接後熱処理を400-950℃、1-3000hrの範囲で行った。溶接金属では、溶接によって固溶したTi-C,N,Oが、600℃以上の溶接後熱処理によって再析出する挙動が明らかになった。再析出は、低温、短時間では微細高密度に発生し、熱処理温度、時間とともに成長して数密度は低下した。再析出が微細高密度の場合は、溶接金属が硬化し、それに伴って衝撃特性が劣化(脆化)することが明らかとなった。最も微細高密度な再析出組織、そして顕著な析出硬化と脆化を示したのは600℃×10hrの溶接後熱処理をした場合であった。一方、600℃では100hr以上の溶接後熱処理(時効熱処理)をすれば析出物が成長して、溶接金属の硬さと衝撃特性は熱処理時間とともに回復した。さらに、800℃で1hrの熱処理をした場合に、600℃で長時間時効したのと同様な組織と、非常に優れた衝撃特性が得られることも明らかとなり、最適な溶接後熱処理条件についての指針が得られた。JMTR(Japan Materials Testing Reactor)を用いて中性子照射も行った結果、溶接後熱処理で再析出を起こさない場合には,溶接金属は母材に比較して大きな照射硬化を示し、衝撃特性も劣化することが明らかとなった。これに対し、600℃以上の溶接後熱処理で再析出をさせれば、溶接金属の照射硬化は母材並みとなり、衝撃特性改善の見こみも得られた。以上の成果の一部は、国内学会及び第11回核融合炉材料国際会議で発表し、他研究者との意見交換を行った。
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