本年度はまず、特性X線により励起された励起X線よりも数桁強度の低い試料からのX線を測定するために、ビームラインの移設によるビーム強度の増大を図った。これまでは、加速器からビームが出た後に、30°偏向し、さらに他の装置との干渉をさけるために10°偏向していた。この偏向の際、磁石のギャップの関係で、10mmのギャップを通る必要があったために、そこでのビームの損失が多大であった。今回、この10°偏向している部分を廃止すると共に、スリット配置の最適化を図り、ビーム強度を数倍増加させることができた。ビーム径は、ビーム量の増大を図ったことにより、よりタイトなジオメトリーが可能となり、以前と同じビーム量においては、ビームスポットをより小さくすることが可能となり、真空中においては0.5mm以下のビームを得ることが可能となった 次に金属フォイルからの特性X線の強度を落とすフィルターの開発を行った。しかしながら、X線源と発生したX線の強度比が大きいために吸収端フイルターを用いても落としきれず、線源を直接に見た体系では励起X線を測定することは困難であることが判明した。そこで、検出器を直接見ない体系の構築を検討したが不可能であり、二次元元素分布画像を取得することができなかった。しかしながら、二次元元素分布画像は不可能であったが、陽子ビームにより励起したX線を用いたXRFは十分に可能であり、陽子ビームによるダメージを受けやすい試料についての分析が可能であることが分かった。
|