研究概要 |
1.大気暴露によるイオンビーム誘起ラジカルの減少 ポリエチレンにイオンビーム照射した後、グラフト重合反応を行うまでの夫気暴露時間のグラフト率に対する影響について調べた.試料は厚さの違う低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを用いた.イオンビーム照射によってできたポリエチレン中のアリルラジカルは水素引き抜き反応によって移動できる.また,アリルラジカルは大気中の酸素と反応し,パーオキシラジカルとなる.このパーオキシラジカルはグラフト重合反応の基点とはならない.したがって、グラフト重合反応によって酸素と結合したラジカルの数が換討できる.ポリエチレン内部のラジカルの挙動と∴酸素の拡散を考慮したモデルを考えた.初期ラジカル密度としては,イオンビームを照射したときの水素減衰から考慮した値を用いた.連立拡散方程式を立てて数値計算した.ポリエチレン内部の構造,すなわち,結晶質部,アモルファス部における酸素移動の違いや,ラジカル移動度の違いを考慮することで実験結果を定量的に説明できた. 2.真空中におけるラジカル消失 イオンビーム照射後,試料を真空中に放置すると,グラフト重合の基点となるラジカルは消失することが実験的にわかった.残留酸素との反応も考えられるが,架橋反応による減少が支配的であると思われる. 3.基礎特性の測定 平成14年度の実験装置の設置,整備に伴って,グラフト率等の測定精度が大きくなったので基礎的な特性(グラフト率のイオンビームフルエンス依存性など)の測定も行った.
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