研究概要 |
本年度は、塩素化多環芳香族類(Cl-PAHs)の光安定性ならびに変異原性について精力的に研究を実施した。まず、Cl-PAHsの光安定性に関しては、大気微小粒子表面組成をモデルにした溶液に、昨年度合成し構造決定された12種類のCl-PAHsをそれぞれ溶解させ、光照射を行うことで評価した。その結果、いずれのCl-PAHsも一次反応的に光分解が進行し、その分解速度定数を比較すると、Cl-PAHsの種類によっては約50倍の違いが見られた。さらに、GC-MSによってCl-PAHsの光分解生成物を検索したところ、4種類のCl-Phenantherene、ならびにCl-Benz[a]anthraceneにおいて、いくつかの酸化された化合物を推定することが出来た。この結果より、Cl-PAHsは光照射を受けると、まず脱塩素化が進行し、次いで溶存酸素による酸化反応で分解が進行すると推測した。 Cl-PAHsの変異原性に関しては、DNA修復機構であるSOS応答を利用したumuアッセイにて評価した。現在まで、2,3のCl-PAHsに限られているが、代謝活性物質(S9)を添加することにより、SOS応答があることを確認した。現在、残りのCl-PAHsについても検討を行なっている。 さらに、今年度は昨年度に引き続き、本学に保存していた過去10年間の大気粉塵試料からCl-PAHs濃度を分析した。この結果、Cl-benzo[a]pyreneを除いたCl-PAHsは冬季に高濃度となり、夏季に低濃度となる傾向が認められた。
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