研究概要 |
今年度においては生物起源炭化水素と窒素酸化物の光化学反応実験を開始した。まず、生物起源炭化水素のうち最も放出量が多いとみなされているイソプレン(C_5H_8)と窒素酸化物の混合物に擬似太陽光を照射し光化学反応を起こした。この反応により生成した有機硝酸類をガスクロマトグラフ/負イオン化学イオン化質量分析計で検出することを試みた。得られたガスクロマトグラムには、イソプレンの高い化学反応性ゆえ数十種類もの生成化合物のピークが見られたが、有機硝酸類に典型的なフラグメンテーションであるNO_2^- (m/e=46),NO_3^-(m/e=62)イオンによってスクリーニングすることにより、約十種類の有機硝酸類が光化学反応によって生成していることが分かった。中でも、パーオキシアシルナイトレート型化合物とアルキルナイトレート型化合物(多官能基型含む)の二種類の有機硝酸類が生成していることが示唆された。しかしながら、この情報だけでは化合物の同定が困難であったため、次の段階として構造が単純なアルキルナイトレートを有機合成し、標準物質として分析することでマススペクトルと保持時間の情報を抽出した。その結果、光化学反応で見られたアルキルナイトレートは炭素数1〜5程度の多官能基有機硝酸類であることが示唆された。
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