天然水中の溶存アルミニウムはAl^<3+>のほか各種の無機錯体・有機錯体として存在するが、その毒性は濃度だけでなく存在形態にも強く依存する。本研究では、琵琶湖に溶存するアルミニウムが最も毒性の強い無機の加水分解種であったという観測事実と、森林土壌には高濃度のアルミニウムが有機錯体となって毒性が弱められているという事実をもとに、「森林土壌に含まれるアルミニウムの有機錯体が、河川を通じて湖に至るまでに、どこでどれだけ減少するか」を把握することを目的とする。 平成14年度は、霞ヶ浦流域においてサンプリング地点の選定および予備調査を行った。桜川(霞ヶ浦流入河川)上流域にあたる筑波山の森林5地点における土壌水(土壌の水抽出液で代用した)、その森林を流れる渓流4地点、桜川4地点、および桜川が霞ヶ浦に流入する土浦入りから湖水の流下方向に沿った霞ヶ浦6地点でサンプリングを行った。 孔径0.4μmのフィルターを通過するアルミニウムを、アルミニウムのヒドロキソ錯体(Al_f)、アルミニウムの有機錯体(Al_<org>)、アルミニウムのコロイド(Al_<col>)に分画するために、ルモガリオン法で(Al_f+Al_<org>)を、HPLC法でAl_<org>を、ICPMS法で(Al_f+Al_<org>+Al_<col>)定量した。 溶存アルミニウム濃度(Al_f+Al_<org>)に占める有機錯体アルミニウム濃度Al_<org>の割合は、森林から湖にかけて大きく変化した。筑波山の森林土壌水では、溶存アルミニウムの約50%が有機錯体アルミニウムであったのに対して、その森林を流れる渓流水では有機錯体アルミニウムの割合は約20%であり、さらに流下して桜川本流に至ると10%まで減少した。桜川が霞ヶ浦に流入する土浦入りでは有機錯体アルミニウムの割合は10%以下であるが、湖心より下流では50%以上であった。
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