天然水中の溶存アルミニウムはアルミニウムイオンのほか各種の無機錯体・有機錯体として存在するが、その毒性は濃度だけでなく存在形態にも強く依存する。本研究では、琵琶湖に溶存するAlが最も毒性の強い無機の加水分解種であったという観測事実と、森林土壌には高濃度のAlが有機錯体となって毒性が弱められているという事実をもとに、「森林土壌に含まれるAlの有機錯体が、河川を通じて湖に至るまでに、どこでどれだけ減少するか」を把握することを目的とする。 霞ヶ浦と流入河川(恋瀬川)において、2002年から2003年8月までの期間、毎月観測を行った。試料はポリ瓶に直接採取し、冷暗所に保管して実験室に持ち帰った後、孔径0.4μmのフィルターで濾過した。濾過水中の溶存Alは、加水分解種(Labile Al)、有機・無機錯体(Non-labile Al)、及びコロイド(Colloidal Al)に分画するために、ルモガリオン法でLabile Al + Non-labile Alを、HPLC法でNon-labile Alを、ICPMS法で全溶存Al (Labile Al + Non-labile Al + Colloidal Al)を定量した。 恋瀬川では、全溶存Alは夏に高く冬に低い傾向を示し、1年を通じてLabile AlとColloidal Alがそれぞれ約50%を占め、Non-labile Alは5%未満であった。高浜入り(恋瀬川が霞ヶ浦に流入する地点)の全溶存Alも、恋瀬川と同様の傾向を示したが、Non-labile Alが平均6%に増加した。高浜入りから湖央に向かって、全溶存Al、Labile Al、Colloidal Alは半分以下に減少したが、Non-labile Alは増加した。湖央より下流では、全溶存Al、Labile Al、Colloidal Alは明確な季節変化を示さなかったが、Non-labile Alは夏に高く冬に低い傾向を示した。
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