研究概要 |
1.凍結・凍結乾燥にともなう抽出効率変化の検討 東京湾において底泥を採取し,採取当日に湿泥から模擬消化管液(1%SDS水溶液)抽出したものを比較対照とし、凍結乾燥底泥,および凍結後室温にて融解して湿泥状態を再現したものとを調製し,bioavailabilityを評価した。凍結乾燥底泥と凍結融解湿泥とは同程度のbioavailabilityであったが,採取当日の湿泥と比較すると大幅に低下し,凍結乾燥底泥のbioavailabilityは湿泥の28〜49%であった。Bioavailabilityの評価には共存有機物が重要であることが先行研究において数多く指摘されており,本年度の研究においても,熱分解パイログラムによる共存有機物の差異との関連を調べたが,実用的には「凍結」という操作のみで模擬消化管液による抽出量が大きく変化してしまうことは重要な点であり,今後,凍結によるPAHの粒子内での付着状態の変化など,極めてミクロな視点での調査が必要である。 2.模擬消化管液抽出手法の簡素化 従来用いてきた手法においては,希釈操作による作業量の増大が問題であったが,今年度の検討により,希釈操作を省き,かつ高い回収率が得られることを確認した。このことにより,作業能率が大幅に向上された。 3.実際の底生生物の消化管液と模擬消化管液との抽出特性の比較(情報収集) 模擬消化管液の利用はあくまでも底生生物の真の消化管液との類似性が保証される範囲内でなければならない。そのため底生生物の消化管液に関する情報を収集することは本研究の重要な作業の一つであった。成果発表で参加した国際会議において,類似の研究をしている研究者と様々な情報交換をし,底生生物消化管液の化学分析結果の最新情報を得た。同定されつつある消化管液中の界面活性成分を人工合成し用いることが必ずしも有効とは限らないが,今後の検討課題として重要な視点である。
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