研究概要 |
転写調節因子Cdx2は小腸上皮組織の分化およびがん化制御に関与することが明らかになってきているが、細胞の運命付けのメカニズムは明らかにされていない。本研究は、Cdx2の発現制御が可能なラット未分化腸上皮細胞株IEC-6/Cdx2を作製し、Cdx2の発現誘導に伴い転写促進もしくは転写抑制される遺伝子をcDNA array法とDifferential display PCR法を用いて同定した。その結果、これまでに、増殖因子の一つHB-EGF(heparin-binding epidermal growth factor-like growth factor)が直接転写調節され得る標的遺伝子であることを明らかにした。(発表論文1)。さらに、mitogen-activated protein kinase (MAPK) superfamilyに属するMOK様遺伝子も標的遺伝子であることが明らかになってきた。そこで、9,906種の遺伝子に相当するオリゴヌクレオチドがのったアレイ(CodeLink UniSet Rat I Bioarray, Amersham)を用いて2つの細胞株クーロンにおいて、より網羅的にCdx2の下流遺伝子の探索を行い、Cdx2の発現誘導開始24時間後に、58種類の遺伝子が発現上昇し、9種類の遺伝子発現が抑えられることを見いだした。現在、この結果をもとにCdx2の標的遺伝子であるかどうかを検討し、制御機構の解析を進めている。
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