研究概要 |
多環芳香族炭化水素(benzo[a]pyrene(BaP))と紫外線(UVA)の免疫機能への複合的影響を検討するにあたり、まず培養細胞(ヒト正常皮膚細胞、ヒト白血病細胞)を用いてその影響を検討した。BaP、UVA単独では影響が認められないが、それら2つを複合作用させると非常に強い毒性が認められた。また、発がんの代表的な指標とされる酸化DNA、8-oxo-dGの産生が有意に上昇していた。これらの結果は、BaPとUVAの複合的影響による細胞毒性上昇から免疫能低下の可能性を示唆するばかりでなく、皮膚発がんの誘発を示唆するものであった。そこで、マウスを用いたin vivo実験を行った。マウス背中皮膚にBaPを塗布後、さらにUVAを照射し、その後の免疫能の変化を2,4-dinitrofluorobenzene (DNFB)を抗原とする遅延型過敏症contact hypersensitivity (CHS)の誘導能を指標に検討した。BaP 10μg/cm^2を背中に塗布1時間後にUVA 1J/cm^2を照射した。1日後に照射側とは逆の腹側に0.5%DNFBを塗布し、さらに5日間飼育後、耳介にDNFBを塗布し耳介の腫れから免疫能の変化を判定した。BaP、UVA単独ではCHSの誘導能は変化無かったが、複合処理では明らかなCHSの低下を示した。さらに、DNFBを接触させる時間をBaP、UVA処理後1,3,5日間と変化させると、1日後よりも3,5日後の方が強いCHS誘導の低下を示した。以上の結果は、BaPはUVAと複合的に働くことにより強い免疫低下を誘導すること、その影響は少なくとも照射後5日間は継続することを示した。
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