研究概要 |
植物は異なる環境ストレスに曝された場合に異なる遺伝子を発現することが知られている。本研究はこの性質を利用して、異なる環境ストレスを受けている植物での遺伝子発現パターンをDNAアレイ法により比較し、そのパターンの違いから植物に影響を及ぼす環境ストレスを事前に特定することができるモニタリング手法の開発を目的とする。 平成15年度は前年度に単離することができた12時間のオゾン暴露により発現変化するシロイヌナズナの245種類のESTクローンを用いてオゾンによる遺伝子発現を経時的にモニタリングできるかどうかの検証を行った。具体的にはこれらESTクローンを用いたサブセットマクロアレイを作成し、これを用いて12時間のオゾン暴露によるマクロアレイパターンと3,6,24時間のマクロアレイパターンを比較した。その結果、オゾン暴露12時間に対する3,6時間の遺伝子発現パターンの相関係数は低い値を示した(それぞれR-0.57,R=0.69)のに対して、24時間では高い値(R=0.82)を示した。このことから今回作成したサブセットマクロアレイによりオゾン暴露12時間から24時間までをモニタリングできることが明らかになった。次にこのサブセットマクロアレイにより他のストレス(乾燥、塩ストレス、酸性雨、UV-B、高温、低温)に曝した植物から単離したmRNAを用いた場合のマクロアレイパターンの検証を行なった。その結果、今回作製したサブセットマクロアレイにより全てのストレスを区別することができることが明らかになった。さらに、この結果を用いて、それぞれのストレスを区別するのに必要最小限な12種類のESTクローンを載せたミニマクロアレイを作成しその有用性を検証した。その結果、作成したミニマクロアレイによりオゾンを含む7種類の環境ストレスをアレイパターンにより区別することができた。これによりDNAチップを用いた環境ストレスモニタリング手法の確立ができたと考えられる。
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