パイオニア植物が撹乱跡地に侵入・定着する際の共生菌類の役割を明らかにするため、今年度は主に砂漠化してしまった海岸部に人工的に植え付けられた本来の植生ではないクロマツと、周辺に自然に定着したカシワの根系に共生している外生菌根菌の形成量と多様性を明らかにした。その結果、外生菌根の全細根長にしめる割合は、クロマツで約60〜80%、カシワで約50〜80%と共に高い形成率を示した。出現した菌根形態タイプについて見てみると、クロマツについては採取土壌の地表から5cmまでで12タイプ、5〜10cmまでで10タイプが確認され、両土壌層をあわせて12タイプの外生菌根が確認できた。カシワについて見てみると、採取土壌の地表から5cmまでで17タイプ、5〜10cmまでで15タイプが確認され、両層をあわせて19タイプの外生菌根が確認できた。出現した外生菌根の形態タイプを、クロマツとカシワの間で比較すると、2タイプが両方の樹種に共に出現していたが、出現頻度が10%以下と低く、優占種ではないと考えられた。また、植付け前のクロマツ苗木からは3タイプの菌根が確認され、うち1タイプがクロマツの森林で見られたタイプと同じ形態的特徴を持ち、同一種によって菌根形成されていると考えられた。しかし、このタイプはすべての調査区で4%以下の構成比しか示さず優占種ではなかった。両樹種の外生菌根菌の多様性を比較するために、採取サンプルに含まれた各樹種の細根系の長さと、出現した外生菌根のタイプ数の相関関係をみた結果、カシワの方がクロマツに比べて根系あたりに出現するタイプ数が多い傾向が見られ、自然に定着したカシワの方が外生菌根菌の多様性が比較的高いようだった。以上から、今回調べたクロマツ人工林地では、造林から40年の間にクロマツにも、多様な外生菌根菌の種が定着していることが明らかとなった。
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