廃セメントからのカルシウムイオン抽出反応器、炭酸カルシウム析出反応器を作成・改良して各種条件における実験を行った。また、得られた結果をもとにプロセス設計を行い、リサイクル技術、あるいは二酸化炭素固定技術としての実現可能性の評価を行った。カルシウム抽出実験においては、内容積500mLの耐圧反応器に水350mLを投入し、廃セメント微粉末1.0〜10gを分散させた。また、二酸化炭素の供給圧力を0.90〜3.0MPaの範囲で変化させた。この他に、抽出温度、攪拌速度に関する検討も行った。高圧状態のまま濾過して取り出した抽出液をICPで定量し、水を蒸発させて得られる結晶をXRDにより定性分析した。これらの結果から、炭酸水のカルシウムの溶解度に対して廃セメントが過剰な条件では、抽出水溶液中のカルシウム濃度は、炭酸カルシウムに対して数倍過飽和な濃度レベルまで、5分程度の速やかな時間範囲内で到達することが分かった。一方、廃セメントの少ない実験条件では、廃セメント中のカルシウムの80%程度を抽出可能であることが分かっており、高いリサイクル率が期待できる。両方の実験結果から、廃セメント/水比を大きくし、かつ水を入れ替えることで、反応器体積当りのカルシウム抽出速度を増大させ、かつ廃セメントのリサイクル率を向上させることが可能であると考えられる。現時点までの実験結果から推定される廃セメントのリサイクル技術のエネルギー・コスト消費は、火力発電所から放出される二酸化炭素処理を前提とした場合、17MW/100MW-火力発電であり、得られる炭酸カルシウムの販売も考慮した二酸化炭素の固定費用は5600yen/t-Cと見積もられた。今後は、炭酸カルシウム析出条件の検討、SO_×処理の可能性の検討を行う予定である。
|