研究概要 |
流入下水中には人間由来のエストロゲンが存在しており,その濃度は環境ホルモンの活性度から評価すると最も高い。下水処理の主たる目的は人間の排泄するし尿の処理であるから,人間が生活している限り,生理的作用により排泄されるエストロゲンが下水に存在するのは当然である。しかし,現行の下水処理場においては,有機物除去および消毒に主眼がおかれているため,エストロゲン様物質の公共用水域への流出が危倶される。ところで,視点を変えてみると,下水道は都市から効率的に対象物質のエストロゲンを集約してくれるシステムと捉えることができる。したがって,下水からエストロゲンを効率的に除去できるプロセスを導入することができれば,環境ホルモンの環境への負荷削減に大きく寄与できる。そこで本研究では,模擬エストロゲン濁水および実流入下水について,タンパク質を用いた本泡沫分離法によるエストロゲンの除去について検討した。 凝集・泡沫分離処理において,カオリン濁水および下水から濁質が極めて効果的に除去されたにもかかわらず,添加したE2の大部分は濁質が除去された処理水中に残留した。流入下水の懸濁成分と溶解成分についてESを分析した結果,全ES濃度の95%前後は溶解成分として存在し,凝集・泡沫分離処理後もほとんど除去されなかった。 そこで,粉末活性注入を前段に導入した凝集・泡沫分離処理を試みた。活性炭無添加の場合には,濁質が除去されてもESは処理水に高濃度で検出されたが,活性炭注入率の増加とともにESは効果的に除去された。流入下水(原水濁度126.1度;溶解性ES 141.4ng/Las E2;懸濁性ES6.2ng/L)ついて,活性炭注入率50mg/Lにおいて,98%の濁度除去率が得られ,かつESは8.6ng/Lまで除去できた。
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