研究概要 |
(研究目的) 一昨年から,環境基本法に基づく生活用水の環境基準健康項目(公共用水域及び地下水の水質汚濁による健康の保護に関する環境基準)に,新たにフッ素などの物質が追加された。さらに本年,水質汚濁防止法に規定されている工業廃水中のフッ素の上限値も,従来の15mgdm^<-3>より厳しい8mgdm^<-3>に改訂された。近年の産業廃棄物の処理費用高騰,処理場不足を考えると,処理効率のみならず,処理に伴って発生する廃棄物,すなわちスラッジ量の少ない高度処理技術の開発が必須である。また,ゼロエミッションの概念が広く普及している今日においては,水処理においても周囲の環境への負荷をできるだけ軽減させた,ミニマムエミッション型の処理プロセスが求められる。本研究は,環境中に排出される各種水資源中に含まれている未利用フッ素を回収資源化することを最終目的とし,(1)単純なフッ化カルシウム法と生体模倣法を組み合わせたハイブリッドフッ素回収・資源化技術の構築および(2)水産業廃棄物などの未利用カルシウム資源を用いた水処理に用いる機能性材料の開発を行う。 (研究成果) (1)リン酸カルシウムの一種であるDCPDと水溶液中フッ化物イオンとの反応を詳細に調査した結果,この反応は水溶液中でDCPD表面にナノ表面構造が誘起され,これがフッ化物イオンと反応し,カルシウム欠損フッ素アパタイトを生成していることを示した。 (2)DCPDを用いた水溶液中フッ化物イオンの固定の際,反応後の固相を分離してフッ素を容易に取り出して回収効率を求めることができる溶液組成を明らかにした。 (3)廃棄物中のフッ化物イオンをDCPDで不溶化できる技術を開発した。 (4)水産業廃棄物の主成分である炭酸カルシウムから選択的にDCPD単相をえる技術を構築した。 これらの成果は2004年に学術誌等での発表を予定している。
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