研究概要 |
ケダルシジンクロモフォアの全合成には到らなかったが、重要な知見が得られた。 (1)まず、糖部を除いたビシクロ[7.3.0]エンジインコアーとアンサマクロリドを有するアグリコン部の構築法を確立した。従来のC4位の立体化学では9員環ジイン構造を構築した後、アンサマクロリド部が障害になってコアー上の8位の水酸基の修飾が全く不可能になる。すなわち、8,9位エポキシドの形成ができないことが分かった。そこで、C4位の立体化学を逆にし、C4位に隣接するアルコールをMOM基で保護した非環状エステルを合成した。そのSonogashiraカップリングは、89%の高収率で進行し、アンサマクロリドが構築できた。 (2)C8,9位のジオールのアセトニドは、エタンチオール/亜鉛トリフラートを用いると選択的かつ高収率で脱保護できることを明らかにした。 (3)C4位の立体化学を逆にした基質で、セリウムアミドを用いたアセチリド・アルデヒド分子内付加反応により9員環化が約20%の収率で進行した。生成したC8位の水酸基の立体化学は、アルファー選択的であった。 (4)9員環構築が成功したので、本立体異性体ではアンサマクロリド部が8位から離れた位置に来るはずであり、立体障害が軽減され、新たに生成した8位水酸基の修飾が可能になるはずである。8,9位にエポキシドを形成しアグリマン合成を検討中である。 (5)これまでモデル反応を検討した結果、ケダロサミンのトリクロロイミデートをドナーとするグリコシル化がアルファー選択的に進行することが判明した。この,ドナー不安定であるが、ポリマー担持のDBUを用いる簡便な調製法を開発した。しかも、高度に官能基化された基質でも、C4位水酸基を保護しなければグリコシル化が好収率で進行することを明らかにした。
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