研究概要 |
酸化物やラジカルは,ある種のタンパク質から鉄原子を放出させ,細胞にダメージを与えることが知られている.これらの酸化物ストレスに応答し,防御修復系タンパク質が誘導活性化される現象が生体内に存在することが明らかになり,注目を集めている.大腸菌においては,SoxRSレギュロンが酸化ストレスの防御修復機能の役割を担っており,その中でSoxRタンパク質は酸化ストレスに対するセンサーとして防御修復遺伝子の発現を調節している.SoxRタンパク質は,N末端側のDNA結合ドメインとC末端側の鉄イオウクラスターを含む転写制御ドメインからなる単量体が二量体として機能し,鉄イオウクラスターの酸化還元により転写制御を行うと考えられている.本研究は,SoxRタンパク質およびSoxR-DNA複合体の立体構造をX線結晶構造解析の手法を用いて決定し,SoxRタンパク質によるSoxSプロモータの活性化機構を原子レベルで明らかにすることを目的としている. SoxRタンパク質の活性部位である2Fe-2Sクラスターを含むC末端ドメインについて,1000を越える結晶化条件を検索したところ,タンパク質濃度10mg/ml, PEG6,000を主たる沈澱剤として用い,KClとLiClを共存させたときに,大きさ0.05mmの結晶を得ることができた.この結晶を用いて,大型放射光施設SPring-8において,シンクロトロン放射光を用い極低温条件下(100K)でX線回折実験を行ったところ,3.4Å分解能の反射を確認することができた.この結晶の晶系は六方晶系であり,空間群はP6_222またはP6_422,格子定数がa=b=142Å,c=109Å, α=β=90°,γ=120°であることが判った.
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