研究概要 |
本年度は,プロテオーム解析で同定された複数の染色体関連タンパク質の中で,可視化解析により染色体上での存在が明らかとなったカルレティキュリン(以下CRT)タンパク質について研究を開始した。まず,GST融合CRTの発現ベクターを構築し,大腸菌BL22株を形質転換し,IPTG誘導により大量の試料を可溶性画分に得ることができた。GSTの切断後,多段階クロマトグラフィーによりSDS-PAGE上で単一バンドとなる純度までCRTを精製した。超遠心沈降平衡法からCRTは単量体かつ単分散で存在することが確認できたので結晶化スクリーニングを開始した。Crystal Screen Kitを用いて約450種類の条件で結晶化を試みたが,結晶は得られなかった。そこでGST融合CRTを結晶化したところ0.1mmほどの結晶を得ることができた。しかしながらこの結晶にX線を照射したが,20Åを切るようなデータは得られず,解析は不可能であった。次に精製したCRTについてプロテアーゼ処理を行い、N末端が52残基欠如したコアフラグメント部分を同定した。また、CRTの精製途中にC末端領域(55残基)が欠如した試料が再現性良く得られたことから,来年度はΔN52-CRT,及びΔN52ΔC55-CRTの発現,精製,及び結晶化を行う予定である。 一方,ヒト培養細胞から精製した16mer程度のクロマチンとCRTとの相互作用を表面プラズモン法で,またクロマチン凝縮について沈降速度法による解析を行った。また,ファーウェスタン法による各ヒストンタンパク質とCRTの相互作用も解析した。その結果,CRTとクロマチンとの相互作用が明らかとなったが,この結合はクロマチン凝縮を引き起こすものではなく,また特定のヒストンと相互作用する特異的な現象ではなく,リンカーヒストンを含む全てのヒストンと相互作用するものであることが明らかとなった。
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