Thermus thermophulus HB8由来アセチルオルニチンアミノ基転移酵素(AcOAT)について、クローニング、培養、精製を終了しているので結晶化のスクリーニングおよび構造解析をおこなった。すでに構造解析がなされており、アミノ酸配列の相同性が高い(40%程度)大腸菌由来のオルニチンアミノ基転位酵素(OAT)の座標を用いて分子置換法により位相を決定し、放射光施設を利用して回折実験をおこなうことにより、1.3Å分解能という非常に高分解能で構造を解析することができた。AcOATとOATは非常によく似た立体構造のモチーフをもち、さらに補酵素ピリドキサールリン酸が位置する活性部位に存在するアミノ酸残基もの両者間で非常によく保存されていることがわかった。OATで既に基質結合様式が推定されているが、同じようにAcOATでも基質であるアセチルオルニチンが結合するとすれば、アセチル基を結合する部分にあたる空間がAcOATには用意されていることが明らかになった。 Thermus thermophulus HB8由来アルギノコハク酸合成酵素(AsS)をクローニングし、大量培養、精製ののち結晶化、構造解析をおこなった。アルギニノコハク酸合成酵素(AsS)は、ATPを利用して、シトルリンとアスパラギン酸からアルギニノコハク酸を生成する反応を触媒する。AsSの結晶は4量体酵素が非対称中に2つ存在すると考えられ、Se-Met酵素を作成しても決めるべきSeが72個も存在するためそれだけで構造を決めることは困難であったので水銀の重原子誘導体も作成してこれらのデータをあわせて位相を決定した。実際に構造決定をおこなうと非常に溶媒含有量が多く非対称単位内には4量体1個のみが存在しているだけであった。200Å以上の格子をもち、溶媒領域が多いにもかかわらず構造は非常によい分解能(2.0Å)で決定することができた。
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