本年度は、ヒメツリガネゴケCCaMKを用い、CCaMKのカルシウム依存的な自己リン酸化とその調節機構について様々な変部位特異的変異タンパク質を用いて解析するとともに遺伝子ノックアウト株の解析を行った。 CCaMKの様々なセリン・スレオニン残基をアラニンに置換することによってカルシウム依存的自己リン酸化部位の特定を行った。その結果、Thr352がCCaMKの自己リン酸化部位であることが特定された。Thr352をアラニンに換えた変異体では、CCaMKのカルシウム依存的自己リン酸化とともに、ペプチド基質に対する酵素活性が著しく減少していた。この変異体では、カルモジュリンに対する親和性も低下していた。 ヒメツリガネゴケは他の植物とは異なり高い相同組み換え率を有するため容易にノックアウト(破壊)株が作成可能である。CCaMKの遺伝子ノックアウト株を十数個体作出し、これらを用いてストレス耐性(塩、乾燥、低温など)について解析した。結果は、野生株と比べて大きな変化は見られなかった。サザン解析の結果、ヒメツリガネゴケゲノム中には、もう一つCCaMK様の遺伝子が存在することが示唆された。このことから、遺伝子破壊株において、CCaMKアイソジーンが代わりに機能していることが予想された。CCaMKのin vivoでの役割を解明するためには、破壊株の解析だけでは不十分であることから、遺伝子過剰発現体を作出すべく、イネアクチンプロモーターを用いた発現ベクターを構築した。
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