研究概要 |
脂質、コレステロール輸送に関与すると考えられるABCA1タンパク質の2つの細胞外領域(ECD)の機能を詳細に調べるため、ECD-1を大腸菌で発現させ、それに対するポリクローナル抗体を作製した。 一方、ECD-2は大腸菌でほとんど発現しなかった。ECD-2の構造維持にECD-1との相互作用が必要である可能性もあるので、今後はECD-1とECD-2の共発現を行う。 2つのヌクレオチド結合領域(NBF1,NBF2)でのATP結合・加水分解と機能の関係を調べるために、NBFをマルトース結合タンパク質(MBP)との融合タンパク質として大腸菌で発現させ、ポリクローナル抗体を作製した。バナジン酸トラッピング法によって、培養細胞で発現させたABCA1にATP加水分解活性があることを初めて明らかにした。 遺伝性HDL欠損症の一つであるタンジール病の原因となるABCA1変異の影響を調べた。野生型ABCA1は細胞膜と細胞内区画に局在することを、ECD-1に対する抗体を用いて明らかにした。ECDの変異体の内、R587WとQ597Rは細胞膜への局在が不全となることを糖鎖解析とGFP融合タンパク質の蛍光顕微鏡解析から明らかにした。W590Sは細胞膜に局在し、野生型と同様のATP結合・加水分解活性を持つが、アポリポタンパク質AI依存的なコレステロール輸送が失われることを明らかにした。このことから、W590S変異はATP結合、加水分解以降の段階で機能が失われる可能性を示した。
|