分泌蛋白質Wntのシグナルは受容体からDvl、GSK-3β、β-カテニン、Tcfへと伝えられ、細胞の分化や増殖を制御するβ-カテニン経路やDvlを介して細胞骨格を制御するPCP経路、Ca^<2+>動員を起こしPKCなどを活性化するCa^<2+>経路に分かれて細胞内で作用すると考えられている。私共を含めた複数のグループが哺乳動物細胞でDvlとCKIの共発現や、Wnt-3aやWnt-5aを含むconditioned mediumの添加により、Dvlのリン酸化が起こることを見出しているが、動物細胞におけるWnt依存性のDvlリン酸化の意義と活性化機構については不明な点が多い。そこで本年度は、Dvlのリン酸化機構を解明するため、Wnt蛋白質を精製することを目的とした。 Wnt-3a、Wnt-5a各々を発現するL細胞株とポリクロナル抗体を用意し、Nusseらの方法に準じてconditioned mediumよりカラムクロマトグラフィーを用いて、Wnt蛋白質の精製を試みDvlリン酸化活性を持つ高度に精製した標品の作製に成功した。さらに、L細胞を精製Wnt-3a標品で処理したところ、細胞質内β-カテニンの蓄積が認められ、精製Wnt-5a標品でNIH3T3細胞を処理したころPKCのリン酸化も認められたことから、これらの標品はこれまでに知られているWntの生理活性を維持していることが確かめられた。今後は精製Wnt蛋白質で処理した細胞抽出液から、Dvlリン酸化酵素の同定と精製を試みる予定である。
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