まず、ヒト及びマウスIκB-ζの転写開始点近傍のゲノムDNA断片を取得し、プライマー伸長法やRACE(rapid amplification of cDNA ends)法により、転写開始点を決定した。 IκB-ζの転写開始点を含む種々のゲノム断片に関して、ルシフェラーゼを用いたリポーター系によりプロモーター/エンハンサー活性を評価した結果、転写開始点上流300bp以内に位置するNF-κB結合配列が重要であることが明らかになった。しかし、転写開始点から最大上流約11kb、下流20kbを含む、構築したすべてのリポーターでIκB-ζの示す発現の刺激物質選択性を再現することはできなかった。一過性のリポーター遺伝子の導入では、刺激によるクロマチン構造の変化など、転写開始点近傍のDNAへの転写(調節)因子の結合が実際の細胞内の状態を反映していない可能性を考え、恒常的にリポーターを発現する細胞株を樹立して同様の評価を行ったが、結果は一過性の場合と同様であった。各種シグナル伝達因子の阻害剤や強制発現による解析からもIκB-ζの発現におけるNF-κBの必要性は明らかになったが、TIRドメインに特異的なこの遺伝子の発現を司る分子機構は未だ明らかになっていない。現在、IκB-ζのプロモーター領域への転写調節因子の結合の刺激特異性をクロマチン免疫沈降法による直接の検出と、IκB-ζのmRNAの安定性について検討を進めている。
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