研究概要 |
これまでの実験により、EGFPとAZ1およびAZ2の融合タンパク質(EGFP-AZ1およびEGFP-AZ2)の細胞内局在の蛍光顕微鏡観察により両タンパク質は核と細胞質間をシャトルしていることが示唆された。核と細胞質間をシャトルするタンパク質はその局在がリン酸化によって制御されている場合がある。そこで今年度はまず、^<32>P正リン酸でEGFP-AZ1およびEGFP-AZ2を発現させたNIH3T3細胞をラベルした後EGFPモノクローナル抗体で免疫沈降し、AZ1およびAZ2のin vivoにおけるリン酸化の有無をオートラジオグラフィーにより調べた。その結果、AZ1ではリン酸化タンパク質バンドは検出されなかったが、AZ2では明らかなリン酸化バンドが検出された。また、EGFPの代わりにヒスチジンをタグに用いた場合でも同様の結果となった。次に、タンパク質のリン酸化部位のコンピューター解析によりAZ2のアミノ酸残基Ser-91,Ser170,Ser-186の三箇所がCasein Kinase II(CKII)によるリン酸化の部位と推定されたため、これらの残基をアラニンに置換した変異体を作成しリン酸化の有無を同様に調べた。その結果、Ser-186→Ala置換のみでAZ2のリン酸化バンドは検出されなくなった。さらに、グルタチオンSトエンスフェラーゼ(GST)とAZ2またはその推定リン酸化部位の変異体との融合タンパク質を大腸菌から精製し、^<32>Pγ-ATPと精製CKII存在下でin vitroにおけるリン酸化反応を行ったところ、in vivoと同様にSer-186→Ala置換のみでAZ2はリン酸化されなかった。これらのことよりAZ2は細胞内でリン酸化され、そのリン酸化部位はSer-186であることが示された。そしてこのリン酸化はCKIIにより行われていることが強く示唆された。しかしながら、Ser-186をGluに置換した擬似リン酸化変異体(S186E)および非リン酸化変異体(S186A)を作成し蛍光顕微鏡による局在の観察を行ったが野生型との違いは観察されなかった。現在リン酸化の意義を解析中である。
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