研究概要 |
ATP依存性プロテアーゼLonは,細胞分裂阻害タンパク質であるSulAを分解する際に,構造的・機能的に重要な部位を優先的に分解することが,本研究者の従来の研究より明らかとなっている.このことは,基質機能の迅速かつ徹底的な抑制に貢献する新規の分子機構であると考えられる.本研究はこの機構が,Lonが他の生理基質を分解する際に,また,SulAを生理基質とするもう一つのATP依存性プロテアーゼHslVUがSulAを分解する際に,それぞれ見られるかどうか解明することを目的とした.まず,Lonの生理基質である,リボソームタンパク質S2およびcapsule polysaccharide合成調節因子RcsAについて,それぞれ組換タンパク質の大量調製系を確立した.これらをLonが分解する機構について現在検討中である.HslVUについては,ATPaseサブユニットHslUおよびプロテアーゼサブユニットHslVをそれぞれ組換タンパク質として大量調製した.このHslVUは,SulAをATP依存的に分解したが,その分解速度はLonに比べて顕著に遅かった.また,切断部位は,Lonの場合と若干の相違が見られた.これらの詳細は現在検討中である.また,この様な細胞内プロテオリシスを解析する新規手法として,新規蛍光基質を用いてラット海馬におけるcaspase-1様活性を可視化解析する方法を確立した(Nishii et al. FEBS lett. 518,149-153).さらに,新規セリン・カルボキシルプロテアーゼphysarolisinのクローニングと性状解析を行い,酵素触媒分子機構について有益な知見を得た(Nishii et al. Biochem.Biophys.Res.Commun. 301,1023-1029).
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