研究課題
Mcm10はDNA複製開始に必須の因子であり、ヒト培養細胞において、細胞周期に依存した細胞内局在の変化、リン酸化状態の変化、タンパク質レベルの変動が観察されている。ヒト細胞内において、Mcm10の蛋白質レベルは、M期後期に急激に低下し、G1期では低い状態に保たれる。この蛋白レベルの低下はプロテアソーム阻害剤の存在下ではみられないことから、APC (anaphase promoting complex)によるユビキチン化とプロテアソームを介した蛋白質分解系が、G1期におけるレベル低下に関与していることが示唆されている。そこで、ヒスチジンタグを付加したユビキチンの発現ベクターをHeLa細胞に導入し、プロテアソームの存在下で一過性に発現させて細胞抽出液を得た。この細胞抽出液からユビキチン化タンパク質を金属イオン親和性ビーズで精製したところ、ユビキチン化Mcm10が検出され、Mcm10がユビキチン化されることが証明された。また、GFPタンパク質を融合したMcm10の発現ベクターをHeLa細胞に導入し、融合タンパク質を安定に発現する細胞株を複数単離した。これらの細胞株では、集団中の95%以上の細胞がGFP-Mcm10を安定に発現しており、その発現レベルは内在性Mcm10の2〜3倍であった。GFP-Mcm10のタンパク質レベルは、内在性Mcm10と同様にG1期に低く、S期への移行に伴い増加した。また、GFP-Mcm10は、内在性Mcm10と同様に、M期においてリン酸化され、クロマチンから遊離した。これらの結果は、GFP-Mcm10が内在性Mcm10と同等に機能していることを示唆している。一方、GFP-Mcm10の細胞内局在を検討したところ、S期の進行に伴い、BrdUの取り込みにより見られるDNA複製のfociのパターンと類似した局在変化が観察され、DNA複製の進行に伴い局在が変化することが判明した。
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