微小管上の1分子相互作用を観察するため、まず現有設備にレーザー等の光学機器を組み合わせることで実験装置を改良し、Cy3等の蛍光分子を1分子観察可能にし、大腸菌発現させた双頭キネシンK411の1分子運動を観察した。これに対して、ネックリンカーのない単頭キネシンK327がATP存在下で微小管と相互作用するが、有意な運動を行わないこと、さらには、K327は1mM ADP存在下で微小管に沿った1次元拡散を行うことを確認した。 次に、このような1次元拡散が他のモータータンパクであるミオシンやダイニンでも観察されるかどうかを検討した。ミオシンはウサギから精製した骨格筋ミオシンとそのモータードメインを含むサブフラグメント(S1)を用いた。沈降実験により、ミオシンはS1のみでも、微小管と結合することが示された(解離定数は約10μM)。また、マラカイトグリーン法によるATPase測定によって、ミオシンS1のATP加水分解速度は、微小管との結合によって活性化されなかった。ミオシンS1をシステイン残基(SH1)で特異的に蛍光ラベルしたS1-Cy3を調整し、微小管結合を1分子観察した。ほとんどのS1-Cy3は微小管に静的に結合し、有意な変位が検出されなかった。しかし、明らかに蛍光強度が高く、多分子が会合していると思われる輝点では、微小管上を拡散するのが観察された。この分子協同性のメカニズムについて現在解析中である。またウニ精子軸糸中の外腕ダイニンを用いて、失活のないダイニンの蛍光ラベル法を試みた。私が行った関連の研究からCy3-ATPは、外腕ダイニンの4つのATP結合部位のいづれかに結合することが示唆された。この結合は非常に安定であり、軸糸上の外腕ダイニンに対して3日以上に渡って解離しなかった。このラベル法とトリプシン処理を用いて、蛍光ダイニン断片を調整し、微小管相互作用を解析する予定である。
|