研究概要 |
膜4回貫通型蛋白質であるテトラスパニン(Tetraspanin)superfamilyは接着因子であるインテグリン等と複合体を形成し、また各々違ったテトラスパニン同士で互いに相互作用していることから、"Tetraspan Web"という細胞膜上でのネットワークを形成すると示唆されている。このテトラスパニンの細胞膜上における機能ついてほ不明であったが、最近、この蛋白質群がウイルス感染や受精などの主として細胞融合に関わる重要な役割を果たしていることがわかってきている。テトラスパニンのうち、CD81タンパク質は、C型肝炎ウイルス(HCV)のエンベロープ蛋白質(E2)に結合することから、その感染との関わりが示唆されている。CD81と非常に構造的に近い蛋白質であるCD9は、受精における重要な役割を果たしており、精子の認識に関わるレセプターであることが示唆されている。本研究では、テトラスパニンの細胞外ドメインの立体構造を決定し、構造の詳細を検討比較することにより、構造生物学的観点から、テトラスパニンの立体構造と機能の関係を解明することが目的である。 CD81分子は236個のアミノ酸からなる4回膜貫通型の膜蛋白質であり、2つの細胞外領域(LELおよびSEL)がある。CD81のLEL/SEL複合体結晶ついては、SELの共存下でLELの結晶化スクリーニングの結果、MPDを沈殿剤とした場合に、以前得られた2種類のLEL結晶とは全く晶系の異なる結晶が得られた。これを用いてSpring-8にて2.0Å分解能のX線回折データを収集した。この結晶は、晶系がRhombohedralに属し、a=b=61.4,c=144.2Åであり、2.0Å分解能までのデータで、Rsymが6.2%,Completenessが99.5%であった。この回折データを基に、LEL部分のモデル座標を用いて分子置換法により、立体構造決定を行った。その結果、SEL部分であると考えられる30残基のアミノ酸に相当する電子密度がはっきりと得られており、現在、この電子密度部分に対してモデルビルディングを行っている。 またCD9については、分子モデリングの手法を基にして、CD81-LELの座標を使って、構造予測を行った。その結果、C9タンパク質は、CD81とよく似たコンフォメーションを有し、ダイマー構造を取っているこが示唆された。
|