PASドメイン構造を有したタンパク質は生物界に広く分布しており、遺伝子転写調節の環境センサーや、タンパク質間相互作用部位として働いていると考えられている。本研究では、PASドメインのプロトタイプと考えられるPhotoactive Yellow Protein (PYP)を用いてPASドメインに見られる構造の類似と機能の相関、またさまざまな機能を産む多様性の仕組みを明らかにすることを目的としている。そのために現在PYPの相互作用分子の単離と同定、相互作用様式の解析を行っている。本年度はPYPが光反応サイクルを有することを利用して相互作用に伴う光反応サイクルの変化を指標にして可視吸収の過渡変化を測定して相互作用分子の探索を行った。その結果、菌体抽出物のイオン交換、ゲルろ過クロマトグラフィー分画から光反応サイクルに変化をもたらす画分を二種類得た。この光反応を解析した結果、一方では活性化中間体の長寿命化が観測された。この画分には、核酸成分が主に含まれおりイオン強度の上昇に伴う活性中間体の長寿命化が観測されたものと考えられる。またもう一方の画分では、光反応で極めて長寿命化した活性化中間体様の吸収変化をPYPに引き起こした。この画分には膜小断片が存在していることなどから、光反応に伴う膜への吸着反応が引き起こされたと考えられる。この反応に伴う赤外吸収変化を通常のPYP単独の赤外吸収変化と比較したところタンパク質骨格に由来する吸収変化が大きくなっていることがわかった。このことは、PYPの相互作用に際して、PYP単独では観測されない変化が引き起こされていることを示唆している。特異的な相互作用タンパク質の同定には至っていないが、今後はより高感度な蛍光測定なども行いPYP相互作用分子の探索を進めていく。
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