本研究ではDNAのミリ秒領域の運動性を解析し、DNAのやわらかさがDNA結合蛋白質によって認識されている証拠を観測する事を目標としている。本年度の最優先課題はDNAとそれに結合する蛋白質の系の確立、およびNMRでミリ秒領域の運動性を解析するためのサンプルと測定法の準備である。 まず、DNAとそれに結合する蛋白質の系として、IRF4のDNA結合ドメイン(IRF4--DBD)とそれによって認識されるDNA配列(ISRE)を選び、IRF4--DBDの大量発現系の構築、および、安定同位体標識蛋白質の調整に成功した。このサンプルを用い、IRF4-DBDの主鎖の帰属をほぼ完了し、それに基づき2次構造の解析を行った。その結果、今まで得られているIRFファミリー蛋白質のDNA結合ドメインと相同な構造を持っている事が明らかとなった。また、IRF4-DBDに強く結合するDNA配列候補をSAAB法により複数決定し、その中からNMRによる構造解析が可能な配列を滴定実験により検討した。2つのDNA配列については複合体形成時に良好なイミノプロトンスペクトルを与えたが、蛋白質由来の1H-15N-HSQCスペクトルは解析が困難であった。現在DNA配列のデザインを変えながら、滴定実験を継続している。 DNAのミリ秒領域の運動性をNMRで解析するには、安定同位体標識DNAが必須である。本年度はヘアピンエクステンション法を用いた非標識サンプルの調整、および、13C/15N安定同位体標識DNAの調整に成功した。またそれらのサンプルを用い、1H-15N-HSQCをはじめとする既存の相関法や運動性解析法のセットアップを完了した。
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