研究概要 |
鉄元素は生物にとって欠くことのでぎない成分であるが、鉄(III)イオンは生理的pH条件ではほとんど水に溶解できないことが知られている。そこでバクテリアでは、周囲のから欽を吸収するための精巧なシステムを細胞内に発達させている。一方、大腸菌の内部では、鉄イオンの取り込み調節タンパク質(Ferric Iron Uptake Regulator, Fur)が数多くの(30以上)遺伝子発現を制御している。鉄イオン存在条件下で、このタンパク質は特定のDNA配列に結合し、その下流の遺伝子発現を抑制することが知られている。Fur相同タンパク質は、結核菌や淋菌をはじめとした多くのグラム陽性菌、陰性菌も持っていることがわかっている。すべてのFur相同タンパク質は、分子量約17kDaの単量体である。本研究の目的は、大腸菌由来のFurタンパク質の構造解明と金属イオンによるDNA遺伝子発現メカニズムを解明することである。 昨年度と同様に酵素のX線結晶構造解析に向けて、単結晶製作のために、大量に試料調整を行って、単結晶作成条件の検索(現有クリスタルスクリーン等を用いる)を行う。クリスタルスクリーンでは、約600種類以上の結晶化条件と結晶化のbufferを作製し単結晶の条件を検索して行く。現在のところ、幾つかの条件で結晶が得られているが、分解能が低くて構造解析に向いてない。本年度も、良い結晶の条件を検索していく。
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