本研究は、現行のX線顕微鏡システムを利用した「ミニマイクロスペクトロスコピー」を立ち上げ、本顕微鏡の観察波長域である「水の窓」域において、(1)吸収端を利用した特定元素の2次元マッピング(2)多波長観察の差像を利用した画像解析(3)時間分解マイクロスペクトロスコピーを試み、観察からデータ処理までの手法を確立することを目的とする。 平成14年度は、装置の設計、作製および立ち上げと、15年度の生物試料観察のための予備的な実験をすること、その成果を第7回X線顕微鏡国際会議(グルノーブル)で報告することであったが、予備実験として走査型X線顕微鏡によるマイクロXAFS実験も行った。ESRFで行ったマイクロXAFS実験は、本研究の目的の一つである「ホヤの血液細胞内におけるバナジウムの二次元マップを50nmの分解能で行う」ための予備実験である。この実験は、ESRF(フランス)のID21走査型X線顕微鏡ビームラインで行った。平成14年度のビームタイで、凍結細胞したホヤの血球内の観察を行った。試料の凍結固定条件を検討することにより、非常に良好な凍結試料が得られるようになり、前回、良好な凍結試料ができず測定することができなったXAFSスペクトル測定に初めて成功した。このビームタイムで、0.5μmの分解能での細胞内バナジウムの分布とその化学状態の同定を行うことができた。その結果は、2002年X線顕微鏡国際会議で報告し、平成15年度に出版される会議録で報告される予定である。また、ESRFビームライン担当者との議論から、現在導入を進めているクライオステージのシステムにもいくつかの改良点がでてきたので、現在、この点を早急に解決するための準備をすすめている。
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