研究概要 |
本研究ではミトコンドリアにいたる細胞死シグナルの伝達機構に関して、Bc1-2ファミリーの一員であるBaxの核への移行がPI-3キナーゼ・Akt経路によって負に制御される可能性について検討を行った。この結果、キナーゼ阻害剤を用いた研究や変異型Akt遺伝子の導入実験によって、PI-3キナーゼ・Akt経路が細胞死刺激によるBaxの核への移行を阻害し、細胞死を抑制することを明らかにした。またAktがどのような機構でBaxの核移行を抑制するかについて調べるために、Baxが細胞死シグナルに応じて細胞質から核内へと移行する分子機構について検討を行った。細胞死シグナルへのJNK経路の関与を調べるために、JNK-MKK7融合体を作成して細胞内に発現させたところ、Baxの核移行と細胞死が観察され、JNKの活性化により細胞死のイベントを再現する系を確立することができた。最近になり14-3-3タンパク質がBaxと結合してBaxタンパク質を細胞質にアンカーする作用が報告された。細胞死の刺激によってBaxが細胞質から核内へと移行する機構について、われわれはJNKの活性化がBaxと14-3-3の解離を促す可能性についてさらに検討を行った。この結果JNKが14-3-3タンパク質を直接リン酸化すること、リン酸化によって14-3-3とBaxとの結合が抑制されること、JNKによってリン酸化されない変異型の14-3-3はBaxとの結合がJNKによって阻害されないことを見いだした。これらの成果については、発表論文を現在投稿中である(Tsuruta, F., et al.)。
|