研究概要 |
ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)はC4植物とCAM植物の光合成組織においては光合成の初期炭酸固定酵素として、またこれらの植物の非光合成組織およびC3植物においては細胞内の炭素代謝と窒素代謝のバランスを決定する鍵酵素である。酵素活性は、PEPCに特異的なリン酸化酵素(PEPC-PK)による分子内リン酸化や活性調節因子によって調節される。我々は、本年度に植物酵素としては初めてトウモロコシ由来PEPCの立体構造解析に成功し(Structure,10,1721-1730(2002))、立体構造に基づく詳細な反応機構を提唱することができた。 現在、我々はPEPCの活性調節機構の全容を解明することを目的として、C4植物で唯一遺伝子が同定されているフラベリアのPEPC-PKの結晶構造解析に取り組んでいる。結晶構造解析には、PEPC-PKを高純度かつ大量に得る必要がある。そこでPEPC-PKの遺伝子を導入した組み換え大腸菌の発現条件を検討した。温度、振とう速度、培地の組成を検討することによって、以前1リットルの培地から5mg程度の粗精製サンプルを得ていたが、現在50mgにまで増加した。次に精製条件を検討した。タンパク質溶液やNiアフィニティークロマトグラフィーの条件、更にプロテアーゼ処理の条件を検討した結果、最終的に1リットルの培地から10mgの高純度のサンプルを再現性良く得る方法を確立した。現在のところ大きさはかなり小さいが結晶を得ている。本年度の審査付き論文には、上に示したトウモロコシ由来PEPCの他に、緑藻由来ルビスコ(J.Mol.Biol.316,679-691(2002)、J.Mol.Biol.の表紙に採用された)、紅藻由来ルビスコ(FEBS Lett.527,33-36(2002))他4編が挙げられる。
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