研究概要 |
3量体G蛋白質はGTPの加水分解活性をもつαサブユニット(Gα)とヘテロ2量体で存在するβ,γサブユニット(Gβγ)で構成され、G蛋白質共役型受容体(GPCR)から標的蛋白質へシグナルを伝える分子スイッチとして働く。GαはGDP結合時にシグナル伝達機能のない不活性状態にあるが、GTPに結合すると標的蛋白質と結合可能となり、シグナル伝達可能な活性状態となる。Gαに結合したGTPは分解され、もとの不活性状態のGDP結合型へと変換される。このGαのスイッチサイクルには幾つかの制御蛋白質が関与する。従来のGEF(GDP/GTP exchange factor)やGAP(GTPase activating protein)に加えて、GDP結合型Gαに結合してGDPの解離を抑制するとともに、G蛋白質を細胞質に留まらせるGDI(GDP dissociation inhibitor)の存在が示唆されている。LGNはGαのサブファミリーの一つであるGiαに特異的に結合する蛋白質として同定され、分子のC末端側に4つのGoLocoモチーフ(19アミノ酸残基)と呼ばれるGiα結合蛋白質に共通にみられる配列をもつ。このGoLocoモチーフはGDP結合型のGiαとの直接の結合領域であるとともに、GDIとして働く可能性がある。本研究では、GDPが結合したGiαとLGNあるいはGoLocoモチーフとの複合体のX線結晶構造解析を行い、GoLocoモチーフによるGiαの認識およびGDI活性の分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。これまで、LGN全長およびGoLocoモチーフの結晶化に適した純度での蛋白質精製法を確立したが、単独の系での結晶は得られていない。今後、Giαとの複合体形成下で結晶化を行う。
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