研究概要 |
本研究で私は、出芽酵母における細胞極性形成に関わる新たな因子としてCdc50pを同定した。Cdc50pは相同性の高い蛋白質が広く真核生物に存在し、一つのファミリーを形成しており、細胞の生存に重要な働きをしている可能性が高い。しかしながら、その生理機能はほとんど明らかとなっていない。出芽酵母にはCdc50pファミリーに属する蛋白質がさらに2つ(Lem3pとCrf1p)存在する。Cdc50pとLem3pの二重破壊株は生育が著しく悪化することから、これらの蛋白質間で機能重複があると考えられる。また、最近加藤らのグループ(Kato et al., 2002)が、Lem3pが細胞形質膜上でフォスファチジルエタノールアミン(PE)およびファスファチジルコリン(PC)の脂質二重層間の移動(トランスロケーション)に関わることを明らかにしていることから、Cdc50pファミリーがリン脂質のトランスロケーションに関わる因子であると予想される。そこで、本年度は、Cdc50pファミリーの機能をさらに詳細に解明することを目的に研究を進め、以下のことを明らかにした。 1)Cdc50p、Lem3pはP型ATPaseであるDrs2p、Dnf1Pとそれぞれ複合体を形成して存在する。 2)Cdc50pとDrs2pが正しく細胞内で局在するためには、これら蛋白質が小胞体で複合体を形成することが必要である。 3)Cdc50p-Drs2pはPE、PC、およびフォスファチジルセサン(PS)の脂質二重層間のトランスロケーションを触媒する。 以上のことから、Cdc50pおよびLem3pはリン脂質トランスロケースのサブユニットとして働いていることが示唆された。今後は、これらCdc50pファミリーがサブユニットとしてどのような役割をしているかを明らかにしていくと共に、リン脂質のトランスロケーションの生理的意義を明らかにしていく予定である。
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