骨芽細胞が分泌するマトリックスベジクルと呼ばれる細胞外分泌小胞は、骨石灰化におけるハイドロキシアパタイトの結晶形成を行う重要な器官である。これまで、骨芽細胞膜から分泌されることがわかっていたが、マトリックスベジクルに特異的に局在する分子のターゲティングメカニズムおよび細胞外への小胞形成機構は不明であった。本研究では、マトリックスベジクルに局在する分子の多くが、カベオラ/脂質ラフトとよばれる細胞膜マイクロドメインに局在することから、カベオラ/脂質ラフトがマトリックスベジクルの形成に重要であると考え、細胞外への小胞形成におけるカベオラ/脂質ラフトの役割について検討を行った。その結果、マトリックスベジクルに局在する分子であるアルカリフォスファターゼ、アネキシンII、アネキシンIV、リン酸トランスポーター(NPT-III)が、細胞膜上のカベオラ/脂質ラフトに濃縮されていること、マトリックスベジクルとカベオラ/脂質ラフトのコレステロール・スフィンゴ脂質の割合が類似することから、マトリックスベジクルの形成にカベオラ・脂質ラフトが重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、マトリックスベジクルには、カベオラの構造蛋白であるカベオリン、特にカベオリン-2が多く存在することを見いだした。カベオリン-1とカベオリン-2の割合は、カベオラ/脂質ラフトでは、カベオリン-1が優位であるのに対して、マトリックスベジクルではカベオリン-2が優位であること、また、カベオリン-1の細胞膜滞留型ミュータントを過剰発現させ、細胞膜上のカベオリン-1を増加させると、生成するマトリックス中のカベオリン-2の割合が増加することから、マトリックスベジクルは、カベオリン-2を多く含むカベオラ/脂質ラフトドメインから出芽しているものと考えられた。
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