Tom20はミトコンドリア外膜上のレセプターの1つであり、ミトコンドリアに輸送される前駆体タンパク質を認識する。これまでにtwo-hybrid法を用いたスクリーニングにより、Tom20のC末端側にある機能未知領域に結合するタンパク質として、aryl hydrocarbon receptor interacting protein (AIP)が同定されていた。AIPは、FKBP52のホモログであり、aryl hydrocarbon receptor複合体形成においてコシャペロンとして機能することが知られている。本研究では、AIPがミトコンドリアへのタンパク質輸送に関与する可能性を検討したところ、以下の結果が得られた。(1)Tom20のC末端の酸性残基に富む領域が、AIP内のtetratricopeptide repeat (TPR)モチーフと電荷的に相互作用する。(2)培養細胞内でAIPを過剰発現すると、前駆体タンパク質の合成量が増加し、さらにミトコンドリアへの取り込み量も増大する。(3)AIPは前駆体タンパク質のプレ配列と疎水的に結合する。また、AIPは非プレ配列型の前駆体タンパク質にも結合する。(4)AIP、Tom20、前駆体は三者複合体を形成する。また、AIPはHsc70とも結合する。(5)AIPはタンパク質の凝集を抑制するシャペロン様活性を持つ。以上のことから、AIPは前駆体タンパク質を安定化してミトコンドリア外膜上のレセプターTom20に受け渡す機能を持つと推察された。
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