研究概要 |
アミノ酸の細胞内への取り込みは厳密に制御されているが,これはアミノ酸輸送体の細胞膜への局在によって決められていることをこれまでに明らかにしてきた.酵母のトリプトファン輸送体であるTat2タンパク質(Tat2p)は,トリプトファンを取り込む必要に応じて細胞膜への輸送が制御されている.これはTat2pの翻訳後修飾によって行われ,Tat2pはポリユビキチン化されると液胞へ,ポリユビキチン化を阻害すると細胞膜へ輸送される.平成15年度はTat2pの細胞内輸送ルートを詳細に調べ,ユビキチン化によるTat2pの選別輸送がエンドソームで起こることを強く示唆する結果を得た.さらに,膜のステロール組成がユビキチンを介した細胞膜タンパク質の選別輸送に強く影響を与えることを明らかにした. 細胞膜タンパク質の局在がユビキチン化によって制御されることは高等真核生物でも知られており,酵母で得られた知見をさらに発展させるために,哺乳動物培養細胞を用いた研究も行った.EGF(上皮増殖因子)受容体はEGFに結合して増殖シグナルを発した後にユビキチン化され,細胞膜からリソソームへ輸送されて分解を受ける.EGF受容体のユビキチン化はCblというユビキチンリガーゼによって行われ,Cblに変異が入るとEGF受容体がリソソームへ輸送されず,増殖シグナルを発し続けて癌化につながることが知られている.われわれがCblの局在を調べたところ,EGF刺激に応答してエンドソームで受容体と共局在することが明らかになった.これまでは細胞膜での受容体のユビキチン化がリソソームへの輸送に十分であると考えられていたが,われわれの結果はEGF受容体のユビキチン化がエンドソームでも起こることを示唆しており,受容体を細胞膜に戻すかリソソームへ送って分解するかの選別にエンドソームがきわめて重要な役割を果たしていると考えられる
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