研究概要 |
本研究は、インジェクション法によるトランスジェニックRNAiを確立し、マウス個体レベルでの内在遺伝子ノックダウンを目的としたものである。これにより、種々の発現レベルに応じた目的遺伝子の機能解析が可能となる。マウス卵を用いた予備実験の結果、dsRNA発現ベクターに用いるプロモーターはマウスU6(Pol III)、およびEF1,CMV(Pol II)の両方でRNAiが認められたが、U6プロモーターによるsiRNA発現系の方が効果が高いこと、またoct4遺伝子に対するベクター(U6-oct4)を前核にインジェクションして一過性にsiRNAを発現させたとき、oct4の発現が90%以上抑制され、かつin vitroにおける表現型がOct4ノックアウトマウスと一致することなどが明らかになり、トランスジェニックRNAiの可能性が示唆された。トランスジェニックRNAiの標的遺伝子には、初期胚におけるノックアウトマウスの表現型が明確であること、nullでなくとも表現型が現れることなどを基準に、体節形成遺伝子MesP2と生殖細胞形成遺伝子nanos2を選んだ。まず、MesP2遺伝子の翻訳領域から5種類のU6-MesP2ベクターを作成し、そのRNAi効果を293T細胞を用いた一過性発現系で確認した後、最も効果の高かった3種類(>90%)を使用した。ベクター単独、または混合によるインジェクションで得られたトランスジェニック胚(17.5dpc)を解析した結果、脊椎骨尾部、および肋骨の一部に骨融合の認められる胚が得られた。しかしその割合は16匹中1匹(<10%)と低いため、さらに工夫が必要と考えられる。現在、トランスポゾンシステムを用いた系でトランスジェニックRNAiの作出効率を上げる実験と同時に、体細胞系列と生殖細胞系列でのRNAi効率の比較を行っている。
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