Znフィンガータンパク質SmucがMyoDなどの筋分化調節因子の働きを抑制し、筋分化を調節しているという仮説のもとに研究を進めている。 本年度は、1)ノックアウトマウスの表現型の解析、2)培養系での機能解析を始めた。 1)ノックアウトマウスの表現型の解析 昨年度作製したヘテロ個体どうしを交配した結果、ホモ接合体の個体が産まれた。それぞれの遺伝子型の個体がメンデルの法則に従った数得られている為、Smucをノックアウトマウスは胚性致死ではないことがわかった。ホモ接合体は、見かけ上何ら異常がみられ無かった。Smucが骨格筋の幹細胞であるサテライト細胞で発現がみられることから、筋再生に異常がみられることが予想される。そこで、現在カルディオトキシンを骨格筋内に注入し、筋再生を誘導する実験を開始した。HE染色した組織切片を観察したが、野生型とホモ接合体との間に明瞭な差は見えていない。今後再生の経時的観察、サテライト細胞や、筋芽細胞のマーカーを用いた詳細な解析をすすめる予定である。 2)培養系での機能解析 筋管細胞への分化には、MyoDなどの筋分化調節因子が機能するが、この段階にSmucがどのような影響を及ぼすかを検証するために、筋芽細胞C2C12に強制発現を試みた。CMVプロモーターによってSmucを発現させると、安定に発現するラインが得られなかった。経時的に発現細胞を数えたところ、Smuc強制発現の場合には、コントールとして用いたGFP発現に比べて優位に発現細胞が減少していた。この結果から、Smucは筋芽細胞の増殖を抑制するか、細胞死を誘導していること推察された。そこで、現在はテトラサイクリンによる発現誘導系を用いて、この現象を検証している。更に、筋芽細胞への分化段階について、Smucの機能解析する為に、他の細胞株を用いることを計画している。
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