脊索形成の分子機構に関する進化発生生物学的研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14780564
• 研究機関: 岡崎国立共同研究機構
• 研究代表者: 高橋 弘樹 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (40283585)
• キーワード: 脊索 / fibrinogen / scabrous / T-box

研究概要

中軸中胚葉である脊索は体軸伸長において働くのみならず、神経誘導や神経管形成過程においても重要な役割を果たしていると考えられている。ショウジョウバエの感覚神経細胞分化に働くScabrousの脊椎動物ホモログであるfibrinogen-like proteinの構造はC末端にfibrinogen relatedドメインを持つ分子であるが、脊椎動物の発生過程における役割はほとんど解析されていない。
これまでに、尾索類ホヤの脊索の分化・形成に重要な働きをする転写因子Brachyuryの標的遺伝子であるCi-fibrn(カタユウレイボヤfibrinogen-like protein)のmRNAは脊索細胞のみに特異的に発現することを明らかにしている。このCi-fibrnタンパク質の局在をCi-fibrn : EGFP融合タンパク質あるいは抗Ci-fibrinogen-like protein抗体を用いて調べたところ、興味深いことに、脊索細胞内に顆粒状の発現が認められると共に、脊索細胞から脊索細胞外の背側表皮感覚神経細胞に沿って繊維状に伸びた構造に局在することが明らかになった。また、Ci-fibrnタンパク質のドメイン解析の結果、脊索細胞内での顆粒状の発現にはN末端側の領域が必要であり、脊索細胞外での背側表皮感覚神経細胞に沿った発現にはFibrinogen relatedドメインが機能していることが明らかになった。さらに、Ci-fibrnタンパク質の機能を調べるためにCi-fibrnのアンチセンスモルフォリノオリゴによる翻訳阻害を行ったところ、尾芽胚期での脊索の伸長が強く阻害され、神経分化にも異常が見られた。これらの結果から、脊索から脊索細胞外に分泌あるいは供給されるCi-fibrnタンパク質が脊索動物の神経形成過程で機能している可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Azumi, K., Takahashi, H., Miki, Y., Fujie, M., Usami, T., Ishikawa, H., Kitayama, A., Satou, Y., Ueno, N., Satoh, N.: "Construction of a cDNA microarray derived from the ascidian Ciona intestinalis."Zoological Science. 20. 1223-1229 (2003)
• [文献書誌] Hotta, K., Takahashi, H., Ueno, N., Gojobori, T.: "A genome-wide survey of the Genes for Planar Polarity signaling or Convergent Extention-related genes in Ciona intestinalis and comparisons of evolutionary conserved signaling components."Gene. 317. 165-185 (2003)
• [文献書誌] Takeuchi, M., Nakabayashi, J., Sakaguchi, T., Yamamoto, S.T., Takahashi, H., Takeda, H., Ueno, N.: "Prickle-related gene in vertebrates is essential for gastrulation cell movements."Current Biology. 13. 674-679 (2003)
• [文献書誌] Takatori, N., Hotta, K., Mochizuki, Y., Satoh, G., Mitani, Y., Satoh, N., Satou, Y., Takahashi, H.: "T-box Genes in the Ascidian Ciona intestinalis : Characterization of cDNAs and Spatial Expression"Developmental Dynamics. (In press).