研究課題
哺乳類の発生初期の終脳は大きく背側と腹側の領域に区分される。背側の神経上皮細胞からは終脳皮質を構成する神経細胞が分化し、腹側の神経上皮細胞からは主に線条体や淡蒼球など様々な神経核を構築する神経細胞が産生される。このような脳の特異的な領域で産まれた神経細胞のあるものは発生中に移動するが、標的組織へ細胞を移動させる分子機構についてはまだ不明な点が多い。我々はラット胎生11.5日胚の終脳皮質背側で産生された細胞が、終脳腹側へと移動することを見い出した。この細胞は終脳背-腹の境界部で移動の方向を転換し、終脳後部へと更に移動する。ところが転写因子であるPax6遺伝子の変異ラットでは、この細胞移動の方向転換が起こらず、背側でうまれた細胞は背-腹の境界を越えて終脳の最も腹側へと侵入することを発見した。この細胞移動パターンの異常が細胞自律的なものかどうか調べるため、正常胚と変異胚の間で細胞の交換移植を行った。その結果、少なくとも変異胚における移動の異常は移動する細胞非自立的な異常であることが判明した。
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