研究概要 |
神経活動を解析する新しい手段として、哺乳動物には存在しない物質をリガンドとするショウジョウバエ由来のGタンパク質共役型受容体、オクトパミン受容体(Drosophila octopamine receptor mushroom body ; OAMB)の利用を検討した。2002年度は以下の検討を行った。(1)受容体遺伝子の単離、(2)PC12h細胞におけるレポータージーンアッセイとカルシウムイメージングによる受容体が活性化する細胞内情報伝達経路の解析、(3)ラット大脳皮質由来アストロサイト及び神経細胞を用いたカルシウムイメージング、(4)同じく培養神経細胞を用いた電気生理学的検討。その結果、PC12h細胞においてOAMBは1μM以下のオクトパミン(OA)に対してカルシウム応答を引き起こす一方、これ以上の濃度ではcAMP、MAPキナーゼなどの経路を活性化することが明らかになった。カルシウム応答を引き起こす濃度範囲のオクトパミンを用いてさらに検討を進めたところ、アストロサイトには一過性のカルシウム応答を誘導したが、神経細胞においては応答がみられなかった。神経細胞について電気生理学的検討を行ったところ、膜抵抗の上昇にともなう内向き電流と発火頻度の増加が見られた。なお、上記の研究に先立ち、神経細胞への遺伝子導入法などを確立し、これを報告した(Tsuchiya et al., Brain Res. 956,p221-229,2002)。2003年度は今年度の成果を発表するとともに、脳組織標本にOAMBを発現させ、神経回路網の活動に対する影響を検討したい。
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